おまえのいいところ1
コメントのお返事が滞ってますが、必ず書きますのでしばらくお待ちください^^;
それから。
DISC3でのお話がまだなのはわかってます。
小説のメインも止まったまんまなのはわかってます。
1周年企画タケルたち編もまだなのわかってます。
わかってる上でshort storyの更新です。
前回「あなたのいいところ」の続編になります。
目線がチャンミンからユノに変わりますが、一続きのお話です。
もしこれ以前のお話が気になる方は、最下部のINDEXより過去ログ遡っていただけると助かります。
注意事項:このお話は実際あったお話をヒントにアタシが作ったフィクションです。どうか現実と混同しないでください。そして今の東方神起を好きな方以外には不快な解釈があるかと思いますので、閲覧は自己責任でお願いします。
SIDE:YUNHO
ダンスの練習中に、俺は足を怪我した。
ヤバいかな、とは思ったけど、見る見るうちに腫れてきたからさすがに焦った。
とりあえず連絡しようとスマホを握って、一番に頭に浮かんだ相手は迷わずスルーしてマネージャーにかけた。
「今スタジオなんだけど、ちょっと足怪我しちゃって。…結構ヤバいかなって。…あ、それと、チャンミンに連絡しといてくんない?怖いからかけるのやなんだよー。…うん、うん、お願いします」
一緒にいたダンサー数人が、迎えを待つ間足を冷やしたりしてくれた。
不思議と痛みはそんなになくて、それよりもこれから控えてる日本のツアーができなくなることの方が怖くて仕方なかった。
多分ツアーが中止になれば損害は数十億になるはずだ。
でも、金で払うなんて無責任なことじゃなくて、ツアーのために準備してくれているたくさんのスタッフの苦労は金じゃ返せない。
台無しにしちゃいけない。誰よりも俺が。
怖い、怖い、怖い…
どうしよう、チャンミン…
その時。
スタジオの重いはずの扉が、あり得ない勢いで開いた。
「え?あれ?」
マネージャーだと思ったら、そこに立ってたのはチャンミンだった。
チャンミンは俺を見つけると、こっちに向かってズンズン歩いてくる。
真顔が怖い。
俺の正面にビタッと立ち止まったかと思ったら、床に座り込んで投げ出した俺の足を見下ろして言った。
「マジなんだ?あはは」
俺は見上げたチャンミンが声しか笑ってないのを不思議な思いで見上げてた。
乾いた声はホントは笑っていなくて、ただ現実を受け止めようとしている目だけが変にしっかり見開かれていた。
チャンミンはしばらく黙って見下ろしてから、静かに俺の足の側に屈み込んだ。
足に巻かれた冷却剤入りの濡れタオルをそっと外して眉根を寄せる。
「…酷いな」
「…ごめん」
足首は元の2倍くらいに腫れ上がってたけど、なんだかチャンミンのが痛そうな顔してた。
だから俺はそれを見て、足より胸の方が痛かった。
2転3転するスケジュールの中、俺たちはファンに確かな約束をなにひとつしてあげることができなかった。
みんな不安を感じて、SNSで俺たちに不信感を持つ声があがっている。
ごめんね、何も言ってあげられなくて。
言えない言葉がたくさんあって。
伝えられない思いがたくさんあって。
本当は焦ってばかりいたんだ。
早く、早く…って。
でもそんな俺を見て、チャンミンが言ったんだ。
「こんなに大切に思ってるのに、伝わらないわけないでしょ?」って。
もうすぐ、みんなの笑顔が見れるからって。
だから俺は、ただ黙って頑張った。
頑張るしかできなかったけど、頑張れただけ楽だった。
そんな思いを乗り越えて、やっとツアーの約束までこぎつけたんだ。
だから辛い思いをさせた分、最高のステージを見せなくちゃって。
なのに…。
「わざとじゃないんだから。謝らなくていい」
チャンミンはそう言って、言葉が出てこない俺に声をかけた。
ツアーが控えてるのにどーするんだとか、全く言わないで俺の側で座ってる。
「でも…」
「延期したっていいじゃない」
チャンミンのその言葉に、俺は弾かれたように首を激しく横に振った。
延期?やっとここまできたのに?
このために頑張ってきたのに?
嫌だ、嫌だ、嫌だ!
なんでそんなこと言うんだチャンミン!
言葉が出て来なくて狂ったように首を振ったら、チャンミンの両手が俺の頭を鷲掴みにして止めた。
「ユノが声出ないっていうんなら、いくらだって僕が歌ってあげるけど!ユノのダンスを代わってあげることは僕にはできない!」
無理やり視界に割り込んできた強い眼差しは、次の瞬間に泣きそうに揺れた。
「ってゆーか、ユノのダンスは、誰にも代わってあげることはできないんだよ?」
眉尻が下がって、困った時の顔になる。
だから俺はやっと、チャンミンを困らせてるんだってわかった。
でも。
「でも、延期はダメだ。絶対治すからっ」
「だったら約束して」
「約束?」
「迷惑かけるからって無理するくらいなら、迷惑かけていいから無理しないで」
「チャンミン…」
チャンミンの言葉は、いつも有無を言わせない説得力がある。
「わかったよ」
素直に頷いた俺に、納得したようにチャンミンの目が優しくなる。
「僕以外だと遠慮するでしょ?だから全部僕がやるから」
「また嫁さんとか言われるぞ?」
「いいでしょう!言わせるつもりでやってやろうじゃありませんか!言わせるんだから言われても平気ですよ!はっはっはっ!」
変なテンションの宣言は、俺の気持ちを軽くするため。
そして俺の頭を掴んだままの指先と、チャンミンの優しい声。
「大丈夫。大丈夫だから」
「うん」
チャンミンのおでこが、俺のおでこにくっついて。
だから俺たちは、二人て祈るように目を閉じた。
「とにかく治そう?」
「うん」
チャンミンがいてよかった。
悔しいけどちょっとだけ、ほんのちょっとだけ泣きそうになった。
その日から俺は、すっかりチャンミンがいないとダメになった。
打ち合わせのため事務所に来て、スタッフからの差し入れでアイスをもらったけどチャンミンがいない。
大きな袋に手を突っ込んで、たくさんのカップアイスをより分ける。
「俺はいちごで~チャンミナはバニラ~」
それをふたつ小さいビニール袋に入れて、スプーンもふたつ入れて松葉杖で立ち上がった。
チャンミンどこに行ったんだ?
多分その辺にいるんだろう。
慣れない松葉杖をつきながら、俺は事務所の中をビニール袋をぶら下げて探し回った。
「ちゃんみぃん…アイスぅ…食べよぉ…?」
思い当たるところをあちこちのぞいてみたけど、どこにもいない。
もー、アイス溶けちゃうだろー。
自分でもなんでいちいちチャンミンを探してるんだと思う。
でもいないと落ち着かないし、一緒に食べないと気が済まない。
チャンミン依存症だ。
迷惑だろうなとは思うけど、足が不安で落ち込みそうになっても、チャンミンがいてくれるだけで落ち着くんだ。
精神安定剤みたいなもんなのかな、と思う。
ウロウロ探し回って、ミーティングルームの前に差し掛かった時、中からチャンミンの声が聞こえてきた。
入ろうと思ってノブに手をかけたけど、電話中らしいと思って躊躇った。
「もちろんダンスナンバーはなしですよね?はい、それでお願いします。ホントすいません。必ずツアーで挽回してみせます。大丈夫です。ユノならきっと間に合わせますから」
日本語で話してるってことは、相手は日本のスタッフだろう。
きっとこのあと控えてるリリースイベントの話だ。
心配してるだろうと、チャンミンから直接かけたに違いない。
ホントは俺がかけなくちゃいけないのに、気が回らなかった。
なのにチャンミンは、俺に黙って自分が代わりにやってくれてる。
チャンミンの気遣いには、ホントいつも頭が上がらない。俺は自分がみんなを引っ張っていくことに必死で、こういう配慮に欠けることが多いんだ。
そんな時、俺の知らないところで必ずチャンミンがフォローしてくれている。
俺は後でそれを知って、でもタイミングがずれてしまってからだからお礼も滅多に言えないまんまで。
損な役目ばかりさせちまってるのに、チャンミンは一度も不満を口にしたことはない。
だからきっと俺は、チャンミンにだけは甘えられるんだ。チャンミンがいなかったら俺は、もうとっくにダメになってたかもしれない。
チャンミンがいなくなったらどうしよう。
時々そう考えて、どうしようもないほど怖くなる。
「…何してんの?」
いきなり目の前にチャンミンが立っててビックリした。
え?なんで俺ここにいるんだっけ?と慌てた瞬間持ってたビニール袋がガサガサと音を立てた。
「あ、アイス…そうそう、チャンミンとアイス食べようと思って」
「わざわざ呼びに来なくてもすぐ戻るのに」
「だってアイス溶けちゃうから」
「はいはい。あんまり動き回らないでね。ほら、アイスかして」
手を差し出されて俺は素直にアイスを手渡した。
そしてチャンミンと並んで歩き始める。
チャンミンの歩くスピードは当たり前みたいに俺に合わせてくれてて、そんな小さなことにも嬉しくなった。
「なぁチャンミン、俺ちょっとの間入院するわ」
並んでアイスを食べながら、俺はボソッと言った。
「え?そんなに悪いの?」
「じゃなくて、少しでも早く治すためだよ」
「いつから?スケジュールは?入院だったら支度しないと」
「たから大丈夫だってばっ。支度くらい自分でできるわっ」
「それは無理。必要ないものばっかり詰めて、必要なもの忘れるに決まってる」
…反論できない。
「そ、そーかもだけど!じゃなくて、ここんとこずっと俺にかかりっきりだろ?だから俺が入院してる間、旅行でも行ってこいよ」
「は?ユノをおいて?なにそれ?」
「入院してる間はおまえがいなくても病院の人がいるから大丈夫だし。それにツアー始まったら休みなんて取れねーんだから、今のうちに休んどけって」
チャンミンが優しくて嬉しかった。
うちにも泊まり込んでくれて、二人で暮らしてる頃みたいだし。
でも反面、足が治ってまた元の暮らしに戻ったらさみしくなるだろうなとか。
一旦離れてからだから、前よりさみしく感じたらどうしようとか。
やっと慣れたとこだから、そんな心配ばかりする。
それに、チャンミンが無理してるんじゃないかなって。
それはさみしくなるより嫌だった。
「僕だけ休むなんてできるわけないでしょ?」
「俺は自分の不注意でこんなことになったんだからいいんだよ。それに、俺とべったりいてツアー前にストレス溜まってもマズイし」
俺がそう言った途端、チャンミンは物凄い勢いでまくし立てた。
「まだそんなこと言ってるの?!僕が一人暮らし始めたのはユノといるのが嫌だからじゃないってあれほど!」
「わーかってるわ!わかってるけど!おまえ、俺のことばっかで全然自分のことできてねーし!だからほんと頼むよ。これからもどーせチャンミンの世話にならなきゃだし。今のうちにゆっくりしといてくれよ」
もーっ。喧嘩したいわけじゃないのに、いつもこうなるのはなんでだ?
「…わかった。じゃあキュヒョンと食い倒れツアーでも行ってくる」
ほら出た。
「またキュヒョンかよ」
「なに?ヤキモチ?」
「うるせーな」
キュヒョンキュヒョンて。
何かあるとそればっかりだ。
俺が不貞腐れてると、チャンミンは食べ終わったアイスのカップを片付けながら言った。
「今度まとまった休み取れたら、二人で旅行でも行く?」
今なんつった?
「は?俺と二人はヤだってゆってたじゃん。キュヒョンとは行くくせに」
「インタビューで言うからでしょ。いい加減学習してよ」
「何の話だよ」
「僕は仲良しアピールを期待されると逆らいたくなる」
なんだそれ?
「チャンミンはめんどくさすぎる!俺はてっきりチャンミンは仕事以外で俺とは!」
文句を言いかけた俺の口を、チャンミンは強引に手のひらで塞いだ。
「んぐっ」
いてーわっ!
「もー。なんでわかんないの?僕はどこで、誰といても、in 東方神起なんだよ」
わかりなさいよ、と言ったチャンミンの眉尻が下がって、困った顔になった。
そしたらなぜか俺は恥ずかしくなって、チャンミンの指に噛み付いた。
「うわ痛っ!てか汚なっ!」
「あはーはーはー」
とにかく早く治そう。
チャンミンがいるから大丈夫。
うん、大丈夫だ。
それからいくつかの仕事をこなして、俺は病院に入院した。
俺が入院してる間チャンミンは、キュヒョンと旅行を楽しんでるようだった。
毎日何回も写メを送ってきては、行った先や食べた物を教えてくれて。
土産物屋に入っては俺への土産を選んで「どっちがいい?」なんて写メで聞いてきたり。
まるで一緒に旅行してる気分になるくらいで。
そしてどの写真にも必ず
「창민 in 東方神起」
の文字が入れてあった。
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